イタリア便り特別編。
キド・アイラク・ニホン 2 


今回の帰国で、いくつか目的があった。
ラーメンを勉強すること・・・が大きなその一つ。
25日間でラーメンと言う名の付くものは、18回食べた。
同じもの は一度も食べていないから、18種類ということになる。

イタリアの自作(せざるをえない)麺造りでのポイントは鹹水(カンス イ)という添加物。
イタリアでは危険であるとして認められていないので、まず、普通の ルートでは入手できない。
鹹水は、麺に歯ごたえと縮みを与えるのだが、それがない場合はタマゴ 等で代用することになる。

粉はだいたい3種類を混ぜているが、この配合は企業秘密のため なかなか表に出ない。
そして、それ以外にもスープやチャーシューをどうするのか、どうやってウマさを引き出すのか、
肉を柔かくするのか等の難題が、
110m の障害物のハードルのようにズラッと並んでいるのがラーメンという悪魔的文化なのだ。

ラーメン文化は、ハッキリ言って、食べる方よりも作る方が(面白さに)ハマってしまうから、
こんなに盛んなのだ!。 ・・・それが判ったことが今回の帰国での一番の成果だと思う。
様々なことをメモしながら、そして同時にどうやって限られた食材のイタリアで再現するのか・・・

それを自問自答しながらの毎日だった。


群馬滞在の記録2をお送りします。私的映像で済みません。
私的でありながら詩的にできるのがプロの写真家ですが、似タリア人の僕には難しいですね。


1=喜。前橋のシブーイ店。
こういうのは「しもた屋」と言うんだ、日本語表現の繊細さ。
翻訳しても伝わらない、そういう部分が非常に多いのが日本語です。
2=怒。なに、この肉の高さ!!
すき焼きやるとしたら材料費の9割が肉代ではないか?どうかしてい る、この国は。
誰、ボロ儲けしているのは?
3=怒。なに、この塩の高さ!!
いかにも自然ものっぽく名前がついているが、中身が100%純粋では ないというのを買う人は知っているのだろうか。
今日はパスタを作ろうと思って荒塩を買いに来たが見つからなかった。
これでウマいイタ飯ができるのか、不安になって行く似タリア人。
4=喜。まあ、どうにか形にはなりました。
イカはプリプリ、エビは柔 らか、アサリやムール貝はムチムチ。
問題は・・・前橋ではウマいキリッとした白ワインが見つからなかったこと。
イタリア語では「イナカーナ地方!」。
5=喜。トンカツ専門店にて夕食。エビは冷凍ものであった。
エビにタルタルソースが付いて来ないって、前橋が田舎だってこと?
トンカツソースではエビが負けてしまうので改善を要求します。
6=喜。翌日はウナギ専門店へ。
ウマい!ただ、夕食が6時半というのが似タリア人にはキツい、下手するとおやつの時間だぜ。
山椒中毒の僕 は、たっぷりかけてフワフワのウナギを満喫したのでした。
でもうな重 は2個は食えるね、楽勝で。
支払いが怖いけれど。
7=愛。ウナギ屋の座敷の上がり口。
家族、その象徴として靴達が美しく寄り添っていた。
人格を持つ靴。
すり減って行く,少しずつ痛んで行く、そしてゆっくり と型くずれしながら役目を終える。
何かに似てる?
8=哀。朔太郎の初版本、
高校時代からイタリアに来るまでの10年間 で買い溜めたものを今回,整理することにして古本屋に訊いたら二束三文。
本を読む研究家達が減って来ているのだそうだ。

それなら、朔太郎と僕の母校の図書館に寄贈することにした。
全部で約 30冊。
この私物整理中に、高校時代に借りっぱなしだった本も 2冊出て来た!。
あれー?。
よーし「36年ぶりに本を返しがてら、そのお詫びとして、 この30冊を寄贈する!」ということになって、新聞の取材が来た。
「決してクスねたわけではありません、ながーく借りていただけです」 と母校に持って行った。
かなりアホな似タリア人。
9=喜。クジラの刺身。
あなたは給食でクジラが出た世代?年がバレますよ。
10=喜。いいねー。
イタリアに帰ってから夢に見そう!
枕がズッポリ、ヨダレで濡れて、冷たくて眼が覚めてガッカリするんだろな。
11=喜&怒。カラオケに行く。
なに、この日本語?!

何を言いたいのか判らないけれど、あまりに面白い のでカラオケ画面を撮りまくっていた夜。
J ポップス風に決めてみると、今回の帰国はこうな ります。

「帰りたくなるんだ イエー、SOMETIME。今でもビッグなマウント・AKAGIよ!、
久しぶりだぜ GO BACK HOME. AH--オレを待ってる、あのRAMEN、君と飛ばそう、ア・ ツ・イ障油のしずくー!」
12=喜。二日酔いの頭で、かつての親友ドラマー森村哲也と兄のサッ クス恭一郎、兄弟バンドを訪ねる。
ジャズの生演奏を聴きながら感無量。
サックスを吹く恭一郎の向こうにいるのは次男。

オヤジが切り開いて行 く音の地平に、息子のギターが広がって行く。
せめぎ合いと敬意が交錯するさまを目の当たりにできた幸せなひととき。
受け継がれて行くものがあるのは、多分、最高の贅沢だ。
13=喜。大利根の落ち鮎を食べに。
名前は「ヤナ」だが全然イヤじゃ ない。「もう、どうにでもして、アタシを!」というのびのびしたお昼。

桐生の郊外には、ヤナ+温泉というのもあって、無料でお風呂に入り、
そのままビールへ素直に移行すると言う、国際特許を取りたいくらいの施設があった。
そう、あれはバブルが始まる頃だった。
14=哀。ごめんなさいねー、鮎ちゃん。
そんなに苦しそうにしないで さ。
鮎は、塩焼き、味噌がけ、そしてフライと、3通り出て来るが似タ リア人には身が小さい。
いっそ、鮭くらいの大きさで鮎を作ってくれな いか?
15=楽。ひょんな行きがかりで、占いを受けることになってしまう。
まずは、石のパワーを頂くために準備中。
向こうにあるのが後で出て来るタロットカード。

その箱には「MADE IN CHINA」なんて書いてない事を祈りながら 密かに見ていた僕は、かなり心配性?
それにしても手のキレイな占いの女性であった。
占いは・・・売らないよ、未来は・・・売るのは夢さね。
16=楽。ハイ、ソコノアナタ、モチジカンハ、イチジカンアルヨ、ナ ニキキタイカネ。
後半のタロット占い。
迷えるアタシに、驚愕のご神託が!!!運命的な XXXが10月だそうだ。

来月のイタリア便りをお楽しみに。
17=哀。前橋滞在にキリを付け、明日から江戸へ参勤交代。
その前にオフクロの内視鏡結果をドクターから説明してもらう。
「腸内に出血原因となる腫瘍があり、早い話が・・・」
18=怒。「そうか、長くないんだ、結局は・・・」 一人になって病院の窓から赤城を見る。
つまらないコンクリの箱、積み木のような軽薄なビル達が、赤城のパノラマを蝕んでいる。

そうやって、ジワジワと、確実に負けて行くんだ、赤城も。